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Review
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Exhibition Review
衣川 泰典 展「未知なものと既知なもの」【開催を終えての再考論評】

2009年9月16日(水)~10月4日(日) 1F main gallery + 2F salon
文 / 小金 沢智 (neutron tokyo) 写真 / 廣瀬 育子

  チラシ、切手、書籍のカバー、写真といったいわゆる印刷物だけではなく、エアーキャップやその他一見しただけではよくわからないものまでを紙やキャンバス 上に貼り合わせ、それらのかたちをなぞり、ないしは改変するようにその上からアクリル絵具で描く。それゆえその絵画は、きわめて物質的な佇まいをしてい る。衣川の作品に描写されているおびただしい数のイメージの下には、それ以上の既成のイメージが潜んでいる。


  
《みえないものにふれてみる#10(ボーダー)》
(2009年 / 175×900cm[11枚組] / 紙に印刷物・アクリル・色鉛筆・顔料・ジェッソ・メディウム・他)



《スクラップブックのような絵画#2(ド ラ マ チ ッ ク な 日 々) 》
(2009年 / 132×132×4.2cm / 木製パネルに印刷物・アクリル・顔料・ジェッソ・メディウム・他)


  いや、「潜んでいる」と言うほどそれらの存在は隠れていない。ひとたびアクリル絵具で描かれているイメージの下にあるものに気づけば、むしろそれらが前 面に描かれているイメージをはねのけ、存在を主張することもあるに違いない。美術館好きの人は、ゴーギャン《我々はどこから来たのか我々は何者か 我々は どこへ行くのか》(1897-1898年、ボストン美術館所蔵)や狩野山楽《龍虎図屏風》(17世紀初頭、妙心寺所蔵)の存在に気づき、それらの画像がこ こ最近行なわれた展覧会のチラシを典拠にしていることに思い当たるかもしれない。切手収集癖のある人は、縁のギザギザが表面上にうっすらあらわれているこ とに気づき、その作品が多くの切手の集積の上に成り立っていることに驚くかもしれない。あるいは…と例を挙げればキリがないのだが、とにかく衣川は古今東 西の絵画や切手や書籍(村上春樹の小説や岡本太郎のエッセイ集など)、さらにはそのような一般的に流通しているものだけではなく自身が個人的に撮り留めた 写真など、イメージの二次利用によって作品を制作している。したがって作品はパブリックとプライベートの間を往還し、その狭間に鑑賞者の視線を向けるよう 仕組まれているようだが、けれども最終的には作家本人へと収斂する。




《スクラップブックのような絵画#4(少女の散歩)》
(2009年 / 93×92×4.2cm / 紙に印刷物・アクリル・顔料・ジェッソ・メディウム・他)



《みえないものにふれてみる#9(走る少年)》
(2008年 / 175×336cm[4枚組] / 紙に印刷物・アクリル・色鉛筆・顔料・ジェッソ・メディウム・他)


  


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・開催展示再考論評1

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