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neutron tokyo 1F main gallery + 2F salon Exhibition

森 太三 展 「果たすことの連続」
2010年3月17日(水)~4月4日(日) [ 会期終了 ]

Comment, gallery neutron ISHIBASHI Keigo

ギャラリーニュートロン代表 石橋 圭吾

  これほどのキャリアと実力を伴いながら、未だ東京での発表が無かったと言うのが不思議なくらい。森太三というオーガニックな名前を背負い、彼は消費文明社 会における雑多な素材を用いながら、見事なまでに繊細で時間のかかる仕事を積み重ね、私達の目の前に驚く程雄大で清々しい光景を生み出す匠(たくみ)であ り、一般に思われる彫刻の概念を覆す現代彫刻家である。

  彼は木や鉄、樹脂といった素材を削ったり熱したりしてフォルムを形成する事はあまりなく、替わりに用いるのは軽量粘土という、子供らが喜びそうな材料で ある。野性的な風貌に似合わず、彼はその粘土を器用に指先で丸め、無数の球体を生み出し、それを針金に通すことによって(ビーズアクセサリーのように)球 の連続を形成し、さらにはその一筋の流れを複数存在させることによって空間に意味を持たせた光景を現出させる。あるいは、粘土の球は巨大な容器に無数に放 り込まれ、色とりどりの大海原のように波打ち、イメージを拡散させる。着色された粘土の色はクレヨンの種類ほどしかバリエーションが無く、一つ一つの球体 は本当に手で丸めただけの簡易なものであるのだが、それらが連結し、あるいは集合することによって次第に個体は全体の中での存在を発揮し、やがて全体は一 つとなる。その光景を如何に見出して楽しむかは各自の想像力にも依るのだが、元来日本人が得意とする「見立て」の様式を現代的に取り入れられることも期待 され、鑑賞者の意識は次第に自然の生み出す美しい景色や現象を想起するに至ることだろう(もちろんそうでなくても構わない)。

  そもそも森太三が粘土を用いるまでには、他に様々な素材を用いてユニークな発表を行って来た。折り紙、写真や古本(ただしバラバラに切り刻まれる)、パ ルプ、石膏、ビニール樹脂…。それらは作品の成立のために巧みに選ばれ、ほとんどの場合大量に用意され、展示空間において整然と配置され、実際の物量や空 間の面積以上のイメージの広がりを提示し続けて来た。「彫刻」というと、ある空間内に唐突に異質な「物」が置かれることによって生まれる新たな光景を期待 する事がほとんどだとすると、森太三の作る「それ」は極めて平面的で空間に依存しているように映るかもしれない。だが、良く目を凝らし、
近寄って、あるいは許される範囲で手や足を使って確かめると、そこには実に様々な起伏や変化が用意されており、その微細な凹凸は次第に大きな山脈の連なり に見えるかと思えば、断絶された像の連続からは大いなる肖像が浮かび上がるだろう。数えきれない折り鶴の山や池からは、物質を超越した精神的な存在の強い 気配を感じずにはいられないだろう。つまり彼が彫って、刻んでいるのは目の前にある「それら」のみならず、私達が「それら」を見る事によって空間の中に見 出すイメージのビジョンでもあるのだ。即ちそれこそが、森太三が彫刻家である真の由縁であるとも言えよう。

  この度の東京展では、neutron tokyoの会場構成の性質に応じ、先述の軽量粘土を用いた連なりだけでなく、粘土球がぎっしりと詰まる器としての形態のインスタレーションや、今まで発 表されたことのないドローイングとしての平面作品(しかしよく見ればやはり、凹凸を生かした彫刻的作品でもあるのだが)の発表も予定している。それらの形 状や展示形態は異なれど、イメージの根本は繋がっており、「連続」していることは言うまでもない。今回用意された印象的なタイトル「果たすことの連続」と は、彼が今までの発表で名付けて来た「世界の果て」とも通じる。「果て」はある種の閉塞を感じさせ、生まれてから死ぬまでの一連のサイクルの終了でもあ り、同時に次の何かが生まれることへの期待も含む。「世界の果て」の奥には別の世界が始まることを期待してしまうし、行為や生命の結果としての「果て」に は再生・復活の希望が伴う。一羽づつ丁寧に折られた鶴は「果たされた」ものであり、その何千もの集積は果たされたもの達の墓場であるにも関わらず、おおい なるエネルギーを感じさせる。粘土球の一つ一つは完結しながらも連続し、私達に繊細な雨音を聞かせ、木漏れ日を浴びせ、万物の源であるかのごとく振る舞うだろう。

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