|   |
Gallery Schedule
  |   |   |   |   |   |   |
neutron tokyo 1F main gallery + 2F salon Exhibition

忠田 愛 展 「雲下の素描」
2010年5月19日(水)~6月6日(日) [ 会期終了 ]

Comment, gallery neutron ISHIBASHI Keigo

ギャラリーニュートロン代表 石橋 圭吾

  2008年11月のニュートロン(京都)での個展から一年半。昨夏は大好きなイタリアを周遊し現地の空気を吸うだけでなく、自身の作品制作のヒントを得て以降、さらに着実に歩を進める若手期待の画家がいよいよ東京での初個展に挑む。

  忠田愛がイタリアに興味を持つのは西洋絵画のルーツの探求に余念が無いばかりか、かの地に存在する年月の蓄積による生活・文化・芸術の痕跡に惹かれてい るからでもあり、翻って日本では京都に在住し京都造形大学に在学中は日本画コースに在籍していたことからも、作家の志向がジャンルというよりも素材の扱い や技法にあることは間違い無い。フィレンツェをはじめイタリアの古都も日本の京都も歴史的な文化芸術都市であり、今なおその歴史の時計を刻み続ける創造的 な都市でもある。そしてまた忠田が生み出す作品の質感にも、実に興味深いことに時間の経過による腐蝕や退色、あるいは崩壊といった現象が見て取れることか ら、作家が殊更に古いもの、錆びたものを好むのではないかといった印象を持つことは容易い。しかしもっと根源的な部分から忠田の作品を見て行くことによ り、古い / 新しいといった局地的な観点にとらわれず、おおらかで普遍的な存在価値を見出すことも出来るのではないだろうか。

  忠田作品を見ればその特徴は一目瞭然である。新作だというのにボロボロと崩れる寸前のような画面の質感は、実は絵具をのせる行為=絵画といった概念から 大きく逸脱した行為の連続により、周到な準備と幸運な偶然の協力を得て生み出される現象とも言う事が出来る。代表的な素材として麻布、陶土、和紙、岩絵 具、墨、インク、獣骨炭、木炭, 鉛筆などが挙げられるのだが、それらは一様に有機的な素材であることを意識している部分に着目したい。化学合成によって生まれる絵具などは極力用いないこ とにより、忠田作品は混沌とした様相の中にも落ち着いた風合いを常に醸し出し、それはまるで有機栽培の野菜が形や大きさは不揃いでも植物としての生命感が 漲っているように、彼女の作品もまた泥に汚れ、すすけて見えるようであって実は瑞々しい生命のエネルギーを画面の奥から鮮烈に放っている。例えば掘り起こ した化石のような風化を表面に感じさせながら、忠田の作品は過去の出来事としてではなく、今なお存在が継続していることを訴えかけもしているようである。 ただしその存在とは、物質としての実存を指すのではなく、人間の心の中に鮮明に残る記憶としてであり、あるいは物質亡き後の精神としてであり、さらには物 質が時間の経過とともに変質・変容したとしても維持し続ける気配のようなものを表すのではないかと、極めて物質的な表層を持つ作品から推測することも可能 ではある。

  描かれる人物像が一時期は老人ばかりであったために、ますます物質と精神を客観的に注視していることが浮き彫りになった感は強いが、近作では版画での制 作を始めたり、老若男女問わず人間の顔をさらりとドローイングで表してみたりと、少し作品への取り組みが柔軟に・多様になってきた印象がある。どちらも今 回の個展では発表予定なので、従来の重厚な印象との対比が実に興味深い。そして忠田本来の制作と言って良いであろう、得意の素材と技法を盛り込んだ絵画作 品にも、徐々に新しい気配が生まれつつある。モチーフ(人物)と背景の差異(際)が次第に不明瞭になり、印象と存在がますます混沌とし、明らかな物質感が 退行して画面の中での出来事がいわゆる絵画としての仮想風景に焦点を合わして来ているようにも見える。

  おそらくはこういった変化が予兆ではなく確固たるものとして提示される時、一方では旧作の際立つ物質感が異彩を放ち、トータルで忠田愛の絵画世界の魅力 を膨らませてみせることになろう。まだまだ始まったばかりの画家のキャリアにとって、実験精神は不可欠であり、しかし本質的に描きたいものは不変であるこ とも、これら作品から感受できれば良いと思う。

Information
・展示情報, お知らせ

Comment
・主催者コメント

Profile
・作家紹介, 略歴

Art Works1
・作品紹介1

Art Works2
・作品紹介2

Art Works3
・作品紹介3


2010 Gallery Schedule

Gallery Schedule Main Page

▲PAGE TOP
 neutron tokyo
 〒107-0062 東京都港区南青山二丁目17-14
 TEL & FAX 03-3402-3021
 mail : info@neutron-tokyo.com
 ニュートロン東京へは下記よりお問い合わせ下さい
 ・問い合わせフォーム
営業時間 11:00~19:00 (月曜定休)
地下鉄銀座線「外苑前」駅より徒歩約8分
「青山一丁目」駅より徒歩約15分
 
Copyright © neutron All Rights Reserved.