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neutron tokyo 1F main gallery + 2F salon Exhibition

大舩 真言 展 「WAVE」
2010年6月9日(水)~6月27日(日) [ 会期終了 ]

Comment, gallery neutron ISHIBASHI Keigo

ギャラリーニュートロン代表 石橋 圭吾

  この展覧会のタイトル「WAVE」は、大舩真言の数ある作品シリーズの中でも最も充実した内容と数を誇る連作の名称でもある。普段は作品シリーズとは異な る個展タイトルを付ける彼が、あえてここで「WAVE」と潔く名付けたのは、まさに今の彼の制作が強く集約された結果として、ここに示される大小様々の作 品全てがその名に相応しいものであることを予言したことになろう。大舩の言葉を借りれば、「WAVE」とは「移ろい続ける存在」「振動する粒子」を表すも のであると言うから、一般的に訳される「波(波長)」と遠からず近からず、揺れ動くものを指し示している。

  だが私達の目の前にある作品は、それが四角い額の中の出来事であれ、円形のパネルが壁から浮かんで見せられるものであれ、まさか地震でもない限りは目に 見えて震動して見えたりすることは無い。しかしここで作品の成り立ちに目を向ければ、少し印象が変わって来る。彼の作品はどのシリーズであれ、基本的に日 本画の技法を基に作られており、鉱物を砕いた粒子を膠(にかわ)で和紙に定着させてある。一般的に顔料は植物由来の有機顔料と、鉱物から生まれる無機顔料 に分かれるが、大舩が用いる後者は人類最古の壁画に始まり、歴史の中でも変質や退色に関しては極めて生じにくいものであるとされる。それは鉱物が既に地球 のマントルと地表との間における運動によって科学的変化を起こした結果の色を保持しているからであり、何千・何万年の単位で言えばともかく、おそらくは人 間が認知する上での永遠に近い時間の流れの上で、ほぼそのまま存在する物質及び色彩を選択していると言えよう。ではそれほどまでに確固たる物質として存在 しうる粒子の集合体たる大舩の作品が、なぜ「移ろい続ける」あるいは「振動する」ものと名付けられているのか。

  微細な粒子でも画面上に物質として存在することには違いはない。現に彼の作品画面は光の照射方法や自然光の移ろいによって印象が刻々と変化するのだが、 それはまさに画面の上の物質が光と影のコントラストを常に変化させているからであり、一時たりとも同じ表情を見せない。いわゆる絵画が瞬間の永遠性を求め て生み出されるのとは、考えを異にするものである。どちらかと言えば、ある空間に物質が置かれることによって空間全体の様相に影響を与える「彫刻」に近い とも言える。もちろんそれは狭義では画面という限られた空間においてであり、広義ではその作品が置かれた空間全体に対しての存在感の事を言う。彼が作品を 発表する際に常に細心の注意を払ってその位置や角度、光の具合を最善のものに近づけようとするのは、まさに作品が存在することでその場所がそれまでと違っ た空間へと変貌を遂げるのを知ってこそであり、視覚的にはもちろん、人間が五感+αで感じる「体験」として認識されることを期待しての事でもある。

  大舩の画面に定着している粒子達も、私達人間も、根本的には変質しうる運動体である。地球上に限らず人間の知る宇宙に存在する全ての物質は振動し、光を 反射し、時間の経過とともにゆっくりと変質する。だが大舩作品の見せる「変化」とは物質としての「変質」とは異なり、あくまで受け手としての鑑賞者(人 間)が感じる視覚的印象及び体感する経験としてのものである。画面の上に存在する粒子は確かにそこに在り続け、本質は変わらない。だが私達が作品から受け るイメージは、自然の摂理による環境や光の移ろい、一方では人為的なそれらの操作でいかようにも変化する。このことが確かな存在と不確かな印象の対比を鮮 明にし、私達と彼の作品との邂逅を常に新鮮に、驚きに満ちたものへと導く理由でもあるのだ。

  まさに大舩真言の作品との出会いは一期一会。同じ場所・同じ日時においても鑑賞者次第で印象も異なるとすれば、彼の作品を主観的に評価することは出来て も、絶対的なものとして論じることは難しい。だがそこに彼の作品の魅力が在るのであり、「移ろい続ける」のは作品の置かれる環境と私達人間自身、「振動す る」のもまた作品の外の世界。そしてその事に私達が気づくのは、大舩真言の作品がそこに在るからである。

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