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neutron tokyo 1F main gallery + 2F salon Exhibition

「 エスケープ フロム イリュージョン 」 冬 耳(平面)
2011年6月29日(水)~7月17日(日) [ 会期終了 ]

Comment, gallery neutron ISHIBASHI Keigo

ギャラリーニュートロン代表 石橋 圭吾

 極彩色の艶やかなフォルムの連続と、隙間無く重なり合うモチーフ。緊密で揺るがない関係における色面の成り立ちは、鑑賞者を誘う一方で断固として拒絶して いるようにも見える。しかしながら冬耳の絵画面の最大の特徴とも言える原色の色使い(ここでいう原色とは、材料となる絵具そのままの色を保持して使ってい ることを指す)とフラットな構成は、村上隆以降の現代日本絵画の流れにおいては決して新しいとも言い切れず、それだけを取ってみれば「馴染み易い」作風だ とも言える。

 おそらくこれだけ激しい色彩を用いると、その時点で鑑賞者の好みははっきりと分かれることだろう。ただでさえ繊細な色を好む日本人にとって、この明らか に挑戦的なスタイルは時に、作品をまともに鑑賞することすら妨げるかもしれない。-ではなぜ、彼はこうした制作スタイルを選んだのだろう。

 一見すると植物や人物が具象的に描かれているように見える作品は、しかしながら確かにそのものであると約束されてはいない。私達がある事象を認識するの は主に形と色の二つの要素から、過去に遡って自分が知る限りの対象物を選び出し、それに適合すると思われる「もの」を当てはめて見ているに過ぎないのであ る。従って、彼がわざとらしく明るい花弁状のモチーフを連ねた輪郭を描いてみせる時、それを「花」だと思うのは容易いが、同時にそれは「花の様に見える何 か」でもある。事象を限定しているのではなく、彼は本質的にそのフォルム、色彩によって与えられる印象を掬い取ろうと試みながら、その集合体としての絵画 には別の存在意義を宿らせていると言っても良い。時に私達が思う形状に相応しくない色彩が出現してみえても、それは人間の潜在意識に意図的に働きかけてい る仕業であって、そうした裏切りの行為の連続もまた、彼の生み出す画面を心理的に安定させない要員ともなっている。

 しかし、一方では画面はものすごく安定している。その理由の一つは、彼の確かな技術による描画の緻密さであり、発色のムラや描画の誤差を許さないスト イックな質感にある。もう一つは、そもそもモチーフ(と思しき物体)は中央または親しみ易いバランスの上に配置され、鑑賞者の視点を定めさせる為である。 いわゆる背景(地)とモチーフが明瞭に区別されているので、色彩の氾濫の中でも多くの人は迷う事無く絵の中に親しみのある何かを見つけ出し、そこを頼りに 画面の中を探ることが出来るのだろう。

 だが、ここで言う背景とモチーフとは、どこまでも仮の設定に過ぎないことを忘れてはならない。画面の中にはそもそも、奥行きも無ければ明確な輪郭も存在 しない。それぞれのモチーフ(あるいは単一の色彩を持つ領域、部分)は他と触れ合うギリギリまで侵食し、お互いがせめぎ合った結果としての緊密さが画面を 満たしているのだと考えれば、彼の描く光景は俄に眼前に差し迫ってくるではないか。遠くのものとして見た黒い状景(夜空のように)は、実は最も目先に近い 位置で蠢く何かかもしれない。全てが均等に影響しあい、色=個性をおしくらまんじゅうのように押しつけあっている様は、一瞬の油断と隙(すき)によって破 裂しそうな風船のようでもある。

 折しも今年三月に若手絵画作家の登竜門「VOCA展」に入選を果たし、注目が高まっている中での二年ぶりの個展。その入選作「永遠なんて言わないで」で 見せた目くるめく樹海のような光景は、まさに前後不覚、天地も左右も判別できぬほどの混乱の中で、私達がそれでも頼りにしようとする存在を感じさせもし た。それが仮に作家が助け舟で用意した泥の船であったとしても、私達は目の前にある破裂しそうな色彩の洪水の中に、いきなり飛び込んでは行けないのである。

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