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Gallery Schedule
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neutron tokyo 3F mini gallery Exhibition

「 Tiny Topographies 」 Ann Tarantino [from U.S.] (平面 / ドローイング / インスタレーション)
2012年5月5日 (土) ~ 27日 (日) [ 会期中 5月7日, 14日, 21日 月曜閉廊 ]

Comment, gallery neutron ISHIBASHI Keigo

「Tiny Topographies」 に寄せて

 2006年にneutron(京都)で個展を開催して以来、実に6年ぶりにアン・タランティーノの作品を紹介出来ることになったのは、作家にとってもギャラリーにとっても嬉しい事である。 当時京都に住んでいた関係でアンはneutron だけでなくカフェギャラリーなど数カ所で精力的に発表を行なっていた。 アメリカに生まれ育った作家でありながら、感性は繊細で日本の侘び寂びを指向するかのような表現は、京都の人々にも好感を持って迎えられたのを昨日の事のように思い出す事が出来る。 その時既に彼女の作家としての制作スタイルは現在の基盤として固まっており、インクとアクリルガッシュを用いて紙にドローイングを展開する仕事は今なお発展しながら続いている。 neutron(京都)での個展タイトルは「near map」だったのだが、意訳すれば「近隣地図」「ご近所マップ」とでも言えるだろうか。 京都という狭くてちょうど良い街のサイズを、アンはおそらく楽しみながら歩き、自分の中にその街の地形と人々の記憶を取り込んで、豊かな自然と文化を感じながら、個人的な日記地図を描くかのように表現していたことは想像に難くない。

 インターネットの発達する前には、世界は自分で赴く事によってしか繋がらず、見えてこなかった。 遠くの地での出来事は配信されたニュースを通じて傍観する他なく、旅することは即ち自らの世界を獲得することでもあった。 しかし今や「もう一つの地球」と呼べるワールドワイドウェブ(www)はその名の通り蜘蛛の巣のごとく世界中に張り巡らされ、通信環境さえあれば世界の何処でも瞬時に手が届く時代となった。 さらにはSNS(ソーシャルネットワークサービス)と呼ばれるコミュニティーサイトを通じて、実際には会ったことも、会う予定も無い世界中の人々と個人的な繋がりを持つ事が出来る。 それらによって私たちはもはや、物理的な移動を伴わない関係性、世界観を当たり前のように享受し、新たな世界地図(それはごく個人的な発端から生まれるアメーバのような不定形・不規則なもの)が日々作成・更新されている。

 アメリカの東海岸を拠点とするアンと私たちは物理的には地球の真裏に住んでいる関係であるが、今やその距離は問題で無くなり、六年の月日を隔ててもなお私たちは共感を失わずにこうして再会を果たすことが出来る。 無論、それは懐かしさを求めてのものではなく、日本とアメリカそれぞれにおいて最先端の思考哲学を求めて美術に向き合っている者同士の新しいチャレンジとして、である。 アンが京都で描いた地図は決して京都の地理・事象だけを表すものではなく、今この瞬間に私たちを繋ぐ意識と通信のネットワークを有機的に描いたものであったと言っても差し支えないだろう。 植物のような優美なフォルムと艶やかな原色の色使いは、多様な人種と地域性、宗教や文化の枝分かれを示しているようにも見える。つまりは発端が何処であれ、彼女の描く線はその時点で完結しているのではなく、その先に新しいものと結びつくことを常に待っている。 だからこそ今この時点に描かれる事象は、当時描かれていた物事のバージョンアップの姿であり、本質的には全て「繋がっている」。

 ここまで読んで頂ければもうお気づきだろうが、今回同じ時期に開催する作家として西川茂とのカップリングを選んだのは、両者ともが世界を「繋がり」として見ていることに尽きる。 かたや西川は天と地、大気や水といった地球を構成する要素を普遍的解釈で考察し「画面」で表現するのに対し、アンは意識や関係性といった概念上の事物を「線」で表す。 カリグラフィー(書)にも通ずると思われる最小限の筆致と余白を通じて訴えるものごとは、まさに「小さな地勢図(Tiny Topographies)」であり、東洋に潜在する「掌底の宇宙」の考えにも近しい。

 もはや異国の文化の比較をするよりも、地球に住んでいる私たち人類の意識が確実に近づいていることを考えるべき地点にある。 この会場の二階から三階への吹き抜けに描かれる線(Wall Drawing)が、とてもシンプルに・象徴的に二人の作家の世界観を結びつけるのを目撃してほしい。

gallery neutron 代表 石橋圭吾

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