|   |
Gallery Schedule
  |   |   |   |   |   |   |
neutron tokyo 3F mini gallery Exhibition

「 M A R I A 」 井上嘉和 (写真)
2012年7月11日 (水) ~ 29日 (日) [ 会期中 7月16日, 23日 月曜閉廊 ]

Comment, gallery neutron ISHIBASHI Keigo

「M A R I A」 に寄せて

 音楽を家庭で気軽に再生する音源としてレコード盤が主流だった時代、同時に多くの名アートワークがレコードジャケットに刷られ、世を席巻した。 名盤と言われるレコードには必ず記憶に残る写真やイラストレーションや絵画作品が使用され、耳を刺激する音と同じように視覚的にもアーティストの世界観を楽しむことができたのだ。 そしてMTV に代表される音楽ビデオ番組によって、映像の領域もまた音楽に刺激されながら成長した。 やがてCDが主流になった時にも、サイズこそ小さくなったとはいえ、かろうじて音楽とアートの接点は残されていた。 「ジャケ買い」と言い、音もアーティストも分からない(視聴も出来ない)輸入盤の善し悪しを判別するために、何が最も効果的だったかと言えば、まさにジャケットワークそのものであった。 その責任は極めて重く、だからこそアーティストもまた自身のジャケットを飾るアートワークにはこだわりを発揮していたのであろう。 そういう蜜月関係は音楽とアートの双方にとって必然的かつ歴史的ななコラボレーションを生み続けてもいたのである。

 だが、世はデジタルによる利便性を追い求める時代に突入し、携帯型音楽プレーヤーがもはや物理的な音源を内包しなくなって以降、そこには姿も形も無いデータしか存在しなくなった。 無論今でもCDやレコードは発売されてはいるが、その存在感は薄れる一方であり、人々はカラオケで歌うための予備知識として、あるいはマスメディアで紹介される流行曲を検索しダウンロードする事で満足する傾向を強くする。結果として「ジャケ買い」は行なわれにくくなり、ジャケットそのものの影響力も極めて低く成り下がってしまったと言えよう。 これは音楽ファン及びアートファンのいずれにとっても残念な事であり、双方の影響力の衰退を招いている要因となっていることは間違いないであろう。

 そんな時代ではあるが、新しい表現を模索するミュージシャンやパフォーマー、総じてアーティストという者は決してマスメディアに乗らずともアンダーグラウンドで気を吐き続けている。 むしろアンダーグラウンドたる由縁、その魅力は今の時代にこそ増しているのではないだろうか。 ライブハウスや芝居小屋でしか体験出来ない本物の音圧、迫力、熱気というものは、デジタルとは真逆の存在であり、いわば人間の吐き出す表現の呼吸そのものが、決してデジタル信号化されずに残された唯一の聖域のように、人間の尊厳であるかのように、存在し続けている。 そしてその限られた瞬間に立ち会うオーディエンスの高揚は、メディアによる予定調和の植え付けで得られる陳腐な「感動」とは比較にならないほど不安定で、情緒的で、官能的で、忘れ難いものである。

 そうした熱気を追い求めて、カメラマンの井上嘉和は足しげくライブ会場や芝居小屋へと足を運ぶ。それがクライアントありきの仕事であってもなくても、彼は私達と同じく観客の立場からカメラを構え、目の前に生きている表現者の存在にレンズを向け続ける。 それは理屈を超えた衝動であり、ジャーナリズムであり、ドキュメンタリーであり、井上自身の作為を伴った作品でもある。 あるいはパフォーマンスを繰り広げるアーティストとの、主客に分かれての競演(コラボレーション)でもある。

 ここで紹介される「MARIA」は、井上にとっても縁の深いミュージシャン・波多野敦子とダンサーの東野祥子との三人で生み出した一つの世界観を持つプロジェクトであり、先に波多野のソロアルバム(同名タイトル)のジャケットワーク及びリーフレットに採用されている。 ただしCDサイズでは写真の醍醐味は本来の力ほど伝わりきらないのも事実であり、今回は井上の写真をクローズアップする形で、三人の競演がギャラリーで再現されると考えることが出来るだろう。 つまり単なる写真展ではなく、ミュージシャンとダンサーによるパフォーマンスと関わり合って生まれたビジュアルが、会場に音が流れる時もそうでない時も、私達の視覚だけでない感覚を流動的に刺激する機会となろう。

 劇団「維新派」をはじめ多くの著名アーティストの公式撮影及び発表の多い、まぎれもない実力派の写真の力を感じることのできる又と無い企画である。 波多野と東野が実際に登場するライブでは、「MARIA」の世界観が会場に生の体験として現出する。 写真と実存と、それぞれの対比もまた興味深い。

gallery neutron 代表 石橋圭吾

Information
・展示情報, お知らせ

Comment
・主催者コメント

Profile
・作家紹介, 略歴

Contribution
・寄稿

New Works
・新作紹介

Art Works1
・劇団 維新派 公式撮影写真

Art Works2
・旧作紹介 個展開催風景 09-12年

Art Works3
・アーティスト撮影写真


2012 Gallery Schedule

Gallery Schedule Main Page

▲PAGE TOP
 neutron tokyo
 〒107-0062 東京都港区南青山二丁目17-14
 TEL & FAX 03-3402-3021
 mail : info@neutron-tokyo.com
 ニュートロン東京へは下記よりお問い合わせ下さい
 ・問い合わせフォーム
営業時間 11:00~19:00 (月曜定休)
地下鉄銀座線「外苑前」駅より徒歩約8分
「青山一丁目」駅より徒歩約15分
 
Copyright © neutron All Rights Reserved.