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Review
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Exhibition Review 2
伊吹 拓 展 「導音」【開催を終えての再考論評】

  出品作品中唯一の旧作であるショーケースに展示した《 Amsterdam 》(1,455×1,455mm 、oil on cotton、2007年)は、具体的な名称をタイトルに付けることを好まない伊吹にとって珍しい作品である。現地を訪れて取材したわけではなく、「アム ステルダム」という言葉の響きが作品の印象に合っていたためにそう名づけたとのことだが、このエピソードが物語っているように伊吹の作品は「音」が重要な 要素になっている。「音」を表現しようということではなく、「音」のように他との関係性の中で成立する作品を作ろうとしていると言えばいいか。他の作品と の関係性だけではなく、展示する環境やその場を訪れる人たちとの関係性も同様である。伊吹が今回、当ギャラリーの特性を考慮した上で、「いつまでも寄り添 える感覚を持った絵を並べたい」とステイトメントに書いていることからもそれは窺える。



三点すべて《 on paper work 09 》(2009年 / 760×560mm / oil on paper

  


  伊吹の作品は、とりわけ大作である場合は一見しただけでは仰々しく見えてしまうかもしれない。しかし実際その作品は鑑賞者を威圧しようという素振りはな く、見続けることでむしろ作品に体が包まれているかのような感触をもたらすものだ。個々の作品について言葉を紡ぎ出すのは簡単ではないが、では作品が一点 だけでは自立していないかというとそんなことはない。作品のディテールに眼を凝らせば、一様ではない絵具の重なりと広がりの中に心地よいリズムを感じるこ とができるだろう。今回の個展はもしかしたら、全体としての印象の方が残りやすかったかもしれない。だが、一点だけ見ても十分に見応えがあったことを私は 書き記しておきたい。水面のごとく、あるいは空のごとく吸い込まれるような画面の中、数センチ四方の描写の中に、宇宙の壮大さにも似た絵具という画材がも たらす深淵を見た。





  
左:《 Amsterdam 》 (2009年 / S80 / oil on cotton)
右:《 導音 》 (2009年 / M200 / oil on cotton)

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