|   |
Gallery Schedule
  |   |   |   |   |   |   |
neutron tokyo 1F main gallery + 2F salon Exhibition

「 This is dummy 」 松井沙都子 (平面 / 立体 / インスタレーション)
2012年9月5日 (水) ~ 23日 (日) [ 会期中 9月10日, 17日 月曜閉廊 ]

Comment, gallery neutron ISHIBASHI Keigo

「This is dummy」 に寄せて

 2009年当時にneutron kyoto(京都)にて松井沙都子が行なった個展のタイトルは、「a ghost」であった。 直訳すれば「幽霊」あるいは「おばけ」と呼ばれるものを指すのであろうが、実は作家はこの時点では直感的に「ghost」という言葉を導きだし、自身が作品において浮き彫りにしたい「何か」を象徴するテーマあるいはそのヒントとして、つけたものであったようである。 その後に続く個展では「mimic」(役者/ものまね/模倣などの意)、さらには「Phantom」(幻影/幻想/映像・・・ghost の類語)という言葉を冠し、その都度探求してきた「何か」は今、再び作家の中で「ghost」=「幽霊」という言葉に辿り着き、確固たる存在として打ち出されようとしている。

 だがしかし「幽霊」とはもともと、確かな存在などではない。「幽霊」とは、一般的に「この世にもはや存在しないものが、目に見える形(英語の意味での、image)を伴ってこの世に現れ出たもの」だとするならば、松井はもう一方で「あらゆるイメージが等価に扱われる現代においては、絵画をはじめとするあらゆる視覚的な情報(image) もまた、もはや肉体と魂が一体となり活き活きした存在ではなく、あの世からかりそめの姿をこの世に見せているような、実体のない幽霊的なものと」考えているのだと言う。 つまり、「ghost」と「image」は等価であり、共に実体を伴わない(あるいは失った)抜け殻のような表層的なものだという見方である。 さらにそこから転じて松井の興味は(人間の抜け殻としての)衣服や(肉を取り除いた上での)骨といった物事にも及び、複合的に関連し合いながら、何とも空恐ろしくもヒンヤリと冷めた美しさを伴って、作品に昇華されることとなろう。

 松井は5~6年前までは立体作品やインスタレーションを発表していた事もあったが、次第に制作の基盤を平面に絞り込み、視覚のみに訴えかける事に専念するようになる。 その後数多くのペインティングを生んでいるが、そのどれもが抽象とも具象ともつかない、あやふやで不確かな「image」を描かんとするものばかりであった。 ある時は地(背景)と主体(モチーフ)の関係に違和感を生じさせて奥行きに揺らぎを生じさせ、またある時は線と塗りの関係をひっくり返して私達を軽い混乱に陥れた。 ただしそれは従来の西洋的美術の流れにのって試されてきた絵画の否定まで辿る道筋とは少し異なり、あくまで表層的な象(像)を巡る考察で有り続けようとする意思が存在する。 そこが松井のユニークなところであり、確固たる割り切りでもある。

 アンディー・ウォーホルを代表とするポップアートの時代には、印刷技術や工業化が発達する世の中で、同一規格の商品及び肖像が世に出回ることを揶揄し、あるいは同時に肯定する意味も含み、既製の「image」を作品の中でバリエーションとして増幅させ、実体としてのオリジナルから表層だけをひたすらに抽出し、やがて版画という手段を伴ってさらに世の中へ流通させて行った。 一方、今の時代に松井はデジタルの技法をも取り入れながら、大衆とオリジナルの関係ではなく、一個人としての自分自身の問題提起から「image」(=「ghost」)を導きだし、往年のポップアートを思わせる絵柄を描く。 ただしそれは整然と大量に生産されるものとしてではなく、あくまで何か分からない、得体の知れないものを描いているのであって、私達は釈然とすることもなく、冷ややかで虚ろな浮遊感の中に意識を漂わせるほか無い。

 誰でも気軽にコスプレやメイク、整形によって気軽に容姿を変貌させ、ネットの空間では簡単に架空の存在を演じられる今。 松井ならずとも自分の存在の本質(精神)とは、肉体とどれほど密接なのだろうかという「自分の身体における幽霊性」を思わずにはいられないだろう。

gallery neutron 代表 石橋圭吾

Information
・展示情報, お知らせ

Comment
・主催者コメント

Profile
・作家紹介, 略歴

Statement of Exhibition
・展示ステートメント

Art Works1
・近作紹介 (2011年~)

Art Works2
・2011年 個展(京都)

Art Works3
・2011年 グループ展 / 10, 09年 個展


2012 Gallery Schedule

Gallery Schedule Main Page

▲PAGE TOP
 neutron tokyo
 〒107-0062 東京都港区南青山二丁目17-14
 TEL & FAX 03-3402-3021
 mail : info@neutron-tokyo.com
 ニュートロン東京へは下記よりお問い合わせ下さい
 ・問い合わせフォーム
営業時間 11:00~19:00 (月曜定休)
地下鉄銀座線「外苑前」駅より徒歩約8分
「青山一丁目」駅より徒歩約15分
 
Copyright © neutron All Rights Reserved.