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「 Somewhere in nowhere ～どこでもないどこか～ 」 三尾あすか＆あづち with friends
（平面、立体、映像、アロマなどコラボレーション多数）
2012年11月7日(水) ～ 12月2日 (日) [ 会期中 11月12日, 19日, 26日 月曜閉廊 ]
「Somewhere in nowhere ～どこでもないどこか～」 に寄せて
意外に知られていない事だが、実は私がこの二人に初めて会ったのはneutron発足から間もなく、およそ9年も前に遡る。 正確に言えば二人のうち、妹の「あづち」にだが。 当時新京極三条の5階でギャラリーとカフェを営みつつ「アーティストファイル登録」という作家のポートフォリオ閲覧コーナーを設けていたところ、まだ大学に入りたての彼女が友達の橋本佳代子さん（同じく作家として活躍中）と連れ立ってファイルを持って来たのを今でも鮮明に思い出す。 その頃はまだ二人とも荒削りながら勢いのあるイラストレーション、ドローイング、コラージュなどを溢れんばかりのエネルギーでそれぞれのファイルに充満させていた。 その後ほどなくしてデザインＴシャツメーカーの「graniph」さんからお声がかかり、Ｔシャツの商品化デザインを幾度と無く提供したことも、それほど古い話では無いが懐かしく思う。
烏丸三条の文椿ビルヂングに移転してから、今度は姉の「あすか」にも出会う事になる。それまで双子であることも知らなかったのだが、初めて二人揃って目の前に現れた時は何とも奇妙な思いだった。 服装も制作スタイルも、おそらく性格も全く違う二人の人格が、よく見れば確かに似ている顔と仕草などでシンクロし、私は多少の混乱に陥るとともに未知の可能性にワクワクさせられたものだ。 二人ともまだ未熟で一人づつでは個展開催も難しいかなと思っていたので、双子なら試しに二人展をやってみるか？と言ったところ、二人とも喜んでそれを引き受けたところから、「あすあづ」のアーティストとしての道は一気に開かれて行くこととなる。それは2007年の事であった。
その後の活躍と成長は皆さんご存知の通り、毎年毎年驚かされる事ばかり。 一昨年から足掛け三年に渡ってgallery neutron の専属契約作家第一号として走り続け、無理難題をことごとく打ち破り、時に喧嘩をしながらも二人三脚で猛スピードで駆けて来た。 他の作家達と違い、彼女達は一人づつの個性と制作のビジョンを持ちながら、「双子合作」というヒーロー漫画の合体変身のような術をもって、第三のアーティスト人格を有することが最大の強みである。 付かず離れず並走するそれぞれはライバルでもあり一番の理解者でもある。そして双子合作の制作においては（誰に教えられたわけでもなく）お互いを補完し合い、協力と反目を繰り返しながら誰も想像出来ない表現世界を生み出してしまう。私が思い描く次元は遥か後方に置き去りにし、二人の歩みは日進月歩、止まることなく未来へと疾走する。
そしてneutronの歩みが終わろうとする今、彼女達はアーティストとしてのホームグラウンドであったギャラリーで今まで出会った多くの仲間を呼び集め、二人が展覧会をディレクションする形でneutronでの最後の展示を行なう。そこには幼さを残しつつも確固たる信念を持って自立しようとする二人の姿と、彼女達がneutron を背負い戦い続けてきた日々への思いが見られることだろう。 決して雄弁ではなく、むしろ口下手な二人が作品においては実に力強くまっすぐに語りかけて来る。「3.11」を経て未来へのビジョンを未だ示すことの出来ない日本において、私が2009年の年末に彼女達を目の前にして語りかけた言葉が蘇る。「 二人ならきっと、これからの日本を明るく照らす存在になれる。」「閉鎖的なアートの世界にとどまらず、世の中の多くの人を魅了して、アートの素晴らしさ・楽しさを伝えて欲しい。」
私の勝手な思いによる使命を背に、二人はその役目を果たさんと立派に努めてきてくれた。だが、まだまだ二人とも何も満足はしていない。何も達成していない。 二人が目指すべき地点は未だ遥か先にある。もはやギャラリーという空間を超え、アートという領域を超え、二人による・二人にしか出来ない表現世界を目指すのみ。これは終わりではなく、新たな始まりである。 どこでもないどこかに、時代とともに歩む旅の。
gallery neutron 代表 石橋圭吾 |
