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ただしそうは言いつつも、一階から三階までの展示構成がきわめて完成度の高いものであったことは書き記しておく必要がある。とりわけ二階吹き抜けの壁面に 展示した、今回の展覧会のために制作された《WAVE #80 》(195×273cm 岩絵具、顔料・和紙 2009年)と、吹き抜けに新たに床を増設することで平置きの展示が可能となった《WAVE #50 》(106×238cm 岩絵具、顔料・和紙 2008年)との組み合わせは、今回の展示の大きな見せ場である。
三階では《WAVE #80 》を視野の下方に入れつつ中央に《WAVE #50 》を見ることができ、そのことによる視界の広がりはあたかも空間そのものが拡張されたかのようだった。そしてそれは上記二作の組み合わせに限ったことでは なく、むしろ大舩の作品一点一点が内包している奥行きでもある。岩絵具と顔料という日本画の画材を用いて光や大気、水など流動的な存在を表現する大舩は、 画中にその中央から周縁にかけて白のハイライトをほどこしたり、水平線を据えたりすることで、視線が画面の奥へ奥へと向かうような、西洋絵画的な透視図法 ではない独自の遠近を画面内に生み出すことに成功している。
日本画材による空気遠近法と言えばわかりやすいだろうか。大舩の作品は一見してその表現内容がわかるような作品ではないために、良くも悪くも鑑賞者に時間を要求する。私たちは長い時間作品に身体を浸すことで初めて、その世界の一端に触れることができるだろう。