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出品作品中最も目を引いたのが《出目金》(墨・和紙、90.0×90.0cm、2009年)である。その名のとおり丸く出っ張った巨大な目と、ひらひら と水中でたなびく大きな尾ひれが特徴の出目金を、櫻井は正面から少しズラして捉えることで鑑賞者に強烈なインパクトを与えることに成功した。正面から金魚 を描いた作品としては日本画家・神坂雪佳(1866~1942)の《金魚玉図》(明治時代後期、細見美術館)があるが、雪佳が金魚鉢に入った金魚をまさし く正面から左右対称に描いたのに対し、櫻井は口をパクパクと開け、目玉も左右違う方向を向かせることで、雪佳とは異なる金魚のイメージを生み出した。
博物図譜と同様、本人が意識しているのか否かは不明だが、櫻井の作品は随所に日本美術史上のイメージを彷彿とさせるところがある。むろん、かつての画家 の多くが幼少時から絵筆を持ちそれだけで生活している職業画家であったことを考えれば、その技量を同一視することはできない。しかしモチーフを生き物と一 貫し、墨にこだわって制作を続けるその姿はストイックであり、さらなる展開が期待される。本展では0号サイズの画面に種類の異なるカエルを描いた作品が 12点、会場の所々に展示された。水墨のためまとめるのが難しいかもしれないが、単体ではなく、それらが一つの画面に収まったさまも見てみたい。