2009年6月3日(水)~6月21日(日) 1F main gallery + 2F salon
文 / 小金 沢智 (neutron tokyo) 写真 / 表 恒匡
原色の多用による強烈な色彩からまずその色に目が向くが、冬耳の作品は描かれるものの形態や構図、すなわちイメージの妙にも注目すべき点が多くある。
《ever orange 》 2009年
(キャンバスにアクリル絵具、P30)
たとえば一階最初の展示室に掛けられていた《night flowers》(キャンバスにアクリル絵具、F130、2009年)、《ever orange 》(キャンバスにアクリル絵具、P30 、2009年)、《雲のルール》(キャンバスにアクリル絵具、65.2×160.6cm 、2009年)の三点はすべて冬耳の友人に対するイメージを具現化したものだが、それぞれの雰囲気は過激なものから暖かみのあるもの、爽やかなものなど大 きく異なり、それらだけでも冬耳の対象を掴み取る感覚の自由さを窺い知ることができる。とりわけ《night flowers》は女性の頭髪部分があたかも一つの空間を形成し、その中には毒々しいまでの彩りの花々が咲き乱れている。頭部に描かれているということで 脳、ないしその赤系の色の集合が血や臓器を連想させるが、花がそもそも生殖器である以上、それらは人間・植物を問わず、身体という一点で繋がっている。小 品にも反映されているように、近年冬耳は花をモチーフにした作品を多く制作しているが、それは過去作から一貫して認められる人間のかたちへの関心と重なる ものである。
左 , 《night flowers》 (キャンバスにアクリル絵具、F130 、2009年)
右 , 《雲のルール》 (キャンバスにアクリル絵具、65.2×160.6cm 、2009年)
あるいは、《ハッピーニューエイジ》(キャンバスにアクリル絵具、M120 、2008年)。花をコラージュした作品だが、画面向かって右中央の円形の花は眼球を思わせ、中央を這うようにして描かれている管はまるで背骨だ。それら は部分を注視すれば花に違いないだが、全体として見たときに生物を思わせるかたちとなっている。
《ハッピーニューエイジ》
(キャンバスにアクリル絵具、M120 、2008年)