2009年8月26日(水)~9月13日(日) 3F mini gallery
文 / 小金 沢智 (neutron tokyo) 写真 / 廣瀬 育子
京都は石堀小路の風景を元に制作した《 石堀小路 no.2 》(ゲルインクボールペン・鉛筆・水彩紙、386×540mm 、2008年)から、鴨川沿いの風景に現実にはそこに存在しない一本の巨木を描き加えた《 巨木 》(ゲルインクボールペン・鉛筆・水彩紙、789×1081mm、2008年)へ。今回出品した作品中2008年制作の旧作にあたるこれら二点から、池田 のささやかだが大きな変化をまず看取したい。すなわち、線の軽やかな動きそのままに「何も考えずに描く」ことによって極端にデフォルメされた人物画とは異 なり、現実の風景を元に絵画化していた風景画の制作だが、《 巨木 》では作家の着想によってその「現実」に大幅な変更が加えられているのである。横一列に並ぶ家屋を覆い、それでもまだ画面に全体が収まっていない現実には 想像し難いスケールの木は、しかし家屋が現実に依拠しているためにか突飛なファンタジーにはなっていない。フィクションとノンフィクションの狭間で揺れ る、今回の出品作品中過渡期の作品として位置づけることができるだろう。
左:《 石堀小路 no.2 》(2008年 / 386×540mm / ゲルインクボールペン・鉛筆・水彩紙)
右:《 巨木 》(2008年 / 789×1081mm / ゲルインクボールペン・鉛筆・水彩紙)
その後の作品が今回の出品作の多くを占めるのだが、描かれる風景の現実からの乖離に加え、制作手法もまたそれに合わせるように変化している。池田はまず描 写しようとする対象の輪郭線を鉛筆で描き、その後ゲルインクボールペンを使い数種のパターンと色を組み合わせて作品を制作するが、これまで場所に応じたパ ターンと色の組み合わせは他との兼ね合いを考えて決定されていた。つまり池田の好みが反映されていたとも言えるが、まさしくパターン化された組み合わせは 転じて池田の作品に不自由さを与えてもいたのかもしれない。