ただ、橋本の描く丸顔の女の子は、およそ現代美術に関心のある人なら多くが知っている奈良美智の作品を連想させる。《melt4》（アクリル・ガッシュ・ カラーインク・メディウム・キャンバス、242×333cm、2009年）に顕著だが画面の上から下へ流れる絵具の軌跡からは、モーリス・ルイスの抽象画 を想起する人もいるかもしれない。もちろんどちらも一人の作家の専売特許ではない。ただ、橋本がそれらを意識しているか否かを問わず、第三者にとってそう 見えてしまう、ということは留意する必要がある。比較されることを望まなくとも、私たちが作品を見る際の判断とは、多かれ少なかれそれまでの作品の鑑賞経 験によるところが大きいからだ。

　　

　 けれども、展覧会で出品された作品がそういうものだったという前提に立ち、書き記しておかなければならないこともある。ポートフォリオとともに会期中 テーブルに置かれたドローイング集には、アメリカのアニメに出てきそうなポップでキッチュな想像上のいきものが描かれ、橋本の作品が「目が沢山ある女の 子」だけではないことを知ることができたのだ。キラキラないしギラギラしたマチエールの出品作品とは異なり、ドローイングならではの軽やかさがあり新鮮 だった。今後はそれらの中から本格的な作品としてのヴァリエーションがあらわれても面白いのではないか。そう夢想することは楽しい。


《melt1 》
2009年 / 530×651mm / アクリル、ガッシュ、カラーインク、メディウム、キャンバス



《なみだ》
2009年 / 455×606mm / アクリル、ガッシュ、カラーインク、メディウム、キャンバス



《melt2 》
2009年 / 606×455mm / アクリル、ガッシュ、カラーインク、メディウム、キャンバス



《melt3 》
2009年 / 455×530mm / アクリル、ガッシュ、カラーインク、メディウム、キャンバス



《オレンジのえがお》
2009年 / 455×606mm / アクリル、ガッシュ、カラーインク、メディウム、キャンバス

Review Menu