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Review
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Exhibition Review
益村千鶴 展「Faint light」【開催を終えての再考論評】

2009年10月28日(水)~11月15日(日) 1F main gallery + 2F salon
文 / 小金 沢智 (neutron tokyo) 写真 / 廣瀬 育子

 十一月の空はすっかり陽が落ちるのが早くなり、肌寒くもなり、五時を過ぎればもはや人工照明以外の灯りは月や星以外ない。窓から射し込む光りが次第に弱 まっていくのを感じながら、しかしそれらの作品は仄暗い時間を待っていたようにも見受けられた。益村千鶴の絵画は夜がよく似合う。

 

 蛍光灯をすべて落とし、スポットライトのみの照明となった一階展示室に掛けた作品は七点。作品が掛かっていない壁面もあり、会場の面積を考えれば少ないく らいだが、益村の作品を考えれば適切な点数だった。導入になっている《Espranza》(oil on canvas、1,303×1,620mm、2008年)は首から上のない男性とも女性とも判別し難い人間が手を伸ばし、中空に浮かぶ手を愛おしむかのよ うに包もうとしている作品である。現実ではありえない光景があらわされながら、益村のきわめて高い描写力がその非現実性をあたかも現実に回収せんとしてい るところにこの作品の大きな魅力がある。いや、その要素はこの作品だけの特徴ではない。益村の近作はいずれも現実と非現実の間(あいだ)の絶妙な間(ま) が切り取られているという点で共通している。




《 Espranza 》 2008年 / 1,303×1,620mm / oil on canvas

 新作は《Solitude》(oil on canvas、180×180mm、2009年)、《Given》(oil on canvas、380×455mm 、2009年)、《Faint light》(oil on canvas、380×455mm、2009年)の三点である。《Espranza》と比較すると小振りだが存在感が際立っているのは、先に述べた要素に 加え、一点につき時間のかかるという下地作りによるところもあるのだろうがもちろんそれだけではない。これまでの作品と比較して明らかなのは、以上の作品 がある対象の全体ではなく一部を切り取っているということだ。《Solitude》はまさしく顔の一部分が切り取られており、他の二点はどちらも手に焦点 を合わせたものである。軽く組まれた両手と(《Faint light》)、手首から下がない左手(《Given》)。益村の他の作品を見ると、それらがサイズの大小問わず何かしらの全体を捉えていることに気づく だろう。《Espranza》も、あるいは出品作品としては最も古い作品である《Floating tree》(oil on canvas、273×220mm、2001年)も、作品の雰囲気は違えながらもその点では変わりがない。

 


《 Solitude 》 2009年 / 180×180mm / oil on canvas


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・開催展示再考論評1

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・開催展示再考論評2

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