|   |
Gallery Schedule
  |   |   |   |   |   |   |
neutron tokyo 3F mini gallery Exhibition

池田 孝友 展 「Select of Gambling」
2010年10月27日(水)~11月14日(日) [ 会期終了 ]

Comment, gallery neutron ISHIBASHI Keigo

ギャラリーニュートロン代表 石橋 圭吾

  20世紀後半から現在に至る「現代美術」表現の成立におおいに貢献したとされる、アメリカの代表的な画家ジャクソン・ポロックは、キャンバス(画面)をモ チーフを映し出すそれとしてではなく、描くという行為を行う上での場として捉え、抽象的・独創的な技法で一世を風靡した。ドリッピングと言われる、絵具を 垂らす行為によって生まれる事象はもはや作家の意図から離れ、自然現象や無意識といった要素をアートに持ち込んだ点でも意義が深いとされている。ただし完 全に作家の意図や意識を捨て去ったのかと言えば、決してそうではないであろう。実験的な行為は確信へと変わる段階で既に周到な計算と準備を必要とし、無意 識とされるはずの行動はやがて極めて意識的に行われるものへと変化するのは、人間が学習し、経験を基に生きる動物である以上は避けられないのだから。

  現在においても若い表現者達に「無意識」や「自然に(発生する)」と自称する者が多く見られるが、それらも決してその言葉通りの行為・表現とは言えず、 むしろだいたいにおいて自己の表現における言語化を面倒に思ったり、はなから考えようともしない事による稚拙な言い訳にもなっている。ただしごく一部、本 当に言語化への取り組みの果てに「無意識」「自然」という言葉を使うものがあれば、それは一概に否定できるものでも無い。余談だが俗に「天才」と言われる 人物達の多くは、その仕事が何であれ、平凡な他者に比べて突出した才能を持っているために、もはや俗世間の思考や概念では捉えられないとして言語化すら放 棄される例が見受けられるが、それは正しい有り様ではないと感じる。天才はもちろん、その分野において極めて稀な才能やセンスを生まれ持ったにせよ、歩を 進めれば必ず万人に共通する壁や問題に突き当たり、それを越えるにあたって凡人以上の努力と集中を厭わないからこそ、天才と呼ばれる域に到達することが出 来るのである。従って実は凡百な労力に対し言葉を尽くすよりも、天才と呼ばれる者のそれにこそ徹底的な究明と言語化が必要であると考える。それが他者に依 るものであれ、自身に依るものであれ。

  池田孝友は私の知る限り、少なくともゲルインクペン(いわゆるボールペン)で圧倒的緻密さをもって風景を描くという点においては、天才的な資質を持つ。 しかし彼の思考はどうやら突出するどころか、自らの得意とするゲルインクペンでの制作に自由を感じなくなり、次第にそれは束縛とさえなった様だ。ただその 束縛は与えられたものではなく、自らが感じた「自縛」である。従って他者はそれに対し手を貸す事も出来なければ、そもそもなぜ自らを束縛する(そう感じ る)必要があったのかさえ、本当の意味では分かり難い。

  その予兆はもしかしたらだいぶ以前からあったのかも知れないが、少なくとも私はそこまでのものとは見ていなかった。彼のドローイングは二次元的行為であ りながら、紙の上に三次元を呼び起こすかのように複雑で独特な入れ子構造を生み、日本の片田舎の風景や素朴な道ばたも、彼にかかれば途端に美しく洗練され たものへと変貌する。女性や花といったモチーフにおいても全ての筆致は計算づくであり、自由であり、彼は何の産みの苦しみを持たないものだと思っていた が・・・それは間違いだったようだ。彼はおそらく2008年当時から次第に自分の絵の傾向や癖、行きつく場所に捕われていると感じ、少しづつであるが絵を 動かし、モチーフを崩し、やがて線を解体し、色を偶然に任せ、最後は遂に「無意識」や「自然」という言葉を使わなければならない領域にまで差し掛かってし まった。それはあまりにもあっという間にの出来事であったため、私を含む多くの関係者ですら今回の個展の意図を聞かされた時は驚きを隠せなかった。しかし 彼は全ての意思を捨て去ろうとしている訳ではない。

  彼が試していることがポロックのそれと比べてどれほどの意義があるのか、単に個人的な自縄自縛の果ての自己満足を得る為の行為なのか、真に天才たる姿を 見せる為の必然的な後退なのか、それはまだ誰にも分からない。しかし一つだけ言える事は、彼の金輪際の表現が今試している行為の延長線上にある訳ではな い。むしろ、偶然を知ってこそ自らの表現における必然性を再認識できるのではないかと、感じているのかもしれない。彼の真剣な、おおいなる脱線を笑うなか れ。彼が自ら行った「選択」は、「偶然の選択(Select of Gambling)」と題されてはいるが、そこに至る「選択」は決して偶然ではない。

Information
・展示情報, お知らせ

Comment
・主催者コメント

Profile
・作家紹介, 略歴

Art Works1
・作品紹介1

Art Works2
・作品紹介2

Art Works3
・作品紹介3


2010 Gallery Schedule

Gallery Schedule Main Page

▲PAGE TOP
 neutron tokyo
 〒107-0062 東京都港区南青山二丁目17-14
 TEL & FAX 03-3402-3021
 mail : info@neutron-tokyo.com
 ニュートロン東京へは下記よりお問い合わせ下さい
 ・問い合わせフォーム
営業時間 11:00~19:00 (月曜定休)
地下鉄銀座線「外苑前」駅より徒歩約8分
「青山一丁目」駅より徒歩約15分
 
Copyright © neutron All Rights Reserved.