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「 イケヤン☆ 2010～2011シーズン・オーラス展！」イケヤン☆実行委員会（陶 / グループ展）
2011年3月16日（水）～4月3日（日） [ 会期終了 ]
ギャラリーニュートロン代表 石橋 圭吾
時は平成、世はまさに若手陶芸家戦国時代である。
2008年の秋のリーマン・ショックに端を発した世界不況の影響は、アートの世界にも色濃く影を落とし、当時のアートバブルと呼ばれた状況を一変させ た。いわゆる投機目的の安易な絵画取引、実体からは遥か遠ざかった狂騒の中でのペインティングブームは去り、日本だけでなく世界の美術市場は急停止したの である。以後、その歩みは決して快調に回復することなく、そろりそろりと手探りを続けているのであるが、ある意味ではアートバブル後の今こそ、本当に評価 され、必要とされる作品が売買されていると言う事も出来よう。そしてその中で一際輝きを放ち、存在感を示しているのが、日本発の陶芸ムーブメントである。
「ムーブメント」と呼ぶにはもちろん期間限定的な現象であるとの解釈があってこそだが、それはバブルの様な投機的な原因には由来しない。もともと、陶芸 は写真と同じく非常に根強いファン層を持つ分野であり、百貨店や工房などを経由して日常生活にまで浸透している。だからこそなぜ今さら、ムーブメントなの かという疑問すら持たれるが、それは一重に歴史ある陶芸界に革命を起こし・下克上を果たさんとする若き野武士達の存在抜きには語れない。ある者達は歴史伝 記漫画が火を付けた窯の中から飛び出し、異能の才を躊躇なく発揮し、またある者は日本各地に散らばる同士を募り、若さ故の勢いそのままに怖さを知らぬ大胆 さと奔放さを振りまきながら行脚する。まさにここで紹介する「イケヤン☆」（「イケてるヤング陶芸家」を略して「イケヤン」）こそ、今のアートシーンを席 巻し、各地で話題と物議を醸し出し、もはや既存の業界の在り方を揺さぶるまでに至ったムーブメントの中核である。「イケヤン☆」は岐阜県・美濃の自称”陶 芸日本代表”青木良太率いる若手陶芸家集団であり、その成り立ちは非常にユニークである。メンバーは毎年入れ替え制となっており、年に一度のオーディショ ンで決定されたラインナップによって年間の全国サーキットを展開。青木のリーダーシップにより古い概念や組織運営に縛られず、自分たちが良いと思う陶芸を 自信満々に打ち出し、メディアのバックアップも勢いに変えて突っ走る様は織田信長をも彷彿とさせるが、日本統一はそう簡単ではない。
あえて面白可笑しく眺めれば、「イケヤン☆」の中でも日々戦いが繰り広げられている。所詮は作り手同士の集団であるからこそ、一歩間違えば足並みは乱 れ、散り散りに空中分解してもおかしくは無い。しかしあえて言おう。その緊張感こそが健全な若者の志の証拠であり、共に戦うも・袂を分かつも運命である。 それくらいの火花を散らさずして、何が革命を起こせると言うのだろうか。既に金 理有という異端児が頭角を現し、青木良太ワントップ体制は変化の様相を見せている。他のメンバーも黙ってはいないだろう。「イケヤン☆」は世の中にその存 在を知らしめる術として、自らの陣中において苛烈な競争を経て力強さを増し、一触即発・アツアツのテンションを会場に持ち込んで来る。だからこそ私達はそ の焼きたての器一つと真剣に対峙し、彼らが挑んでくる勝負を受けなければならない。刺すか・刺されるか。いずれ一人一人が自立して狼煙を上げるであろう事 を想像し、器一つが革命を起こすことを疑わず、私達は固唾を呑んで立ち会うのだ。
天下布武を掲げた信長の夢はいつになっても日本人の心を揺さぶってやまない。若者の器は小さくても、そこに注がれる夢は溢れんばかりである。どうせなら私は、大きなロマンという名の酒を酌み交わす器を見つけてみようと思うのだ。
