「 僕には光が見えはじめている 」 石川文子(写真)
2011年8月27日(水)~9月18日(日) [ 会期終了 ]
作品ステートメント / 展示概要
「僕には光が見えはじめている」
4年程前の夏の話になりますが、スランプの時期を経験しました。
撮る前に既に、自分の作品の完成のイメージが分かってしまい写欲が沸いてこないのです。
無理矢理気持ちを奮い立たせ、撮影をし、何本もフィルムを費やし現像をする。
それはそれで悪くないのですが、出来上がった作品を見ても喜びを感じられない。
撮ることが楽しくないのです。
分かりきった結末の映画を何回も見ているような空虚感がありました。
ちょうどその頃、頸椎のヘルニアを患い、一眼レフカメラを持てなくなった時期とも重なり
ますます撮ることから離れてしまうという悪循環でした。
秋口になり、身体の方がずいぶん回復してきましたのでふとカメラを持って外に出てみました。
公園、水辺、植物園、思うままに私の好きなところを歩きました。
光が柔らかくなったなぁ、緑がきれいだなぁと、ただ眺める。そしてシャッターを押す。
すごいものを撮ってやろう、というのではなく、ただ、そこに光があるだけで
それでいいという心境です。
花がある、そこに光が差している、
水辺に緑が映り込んでいる、部屋の午後の柔らかい光、ただそれを見つけて撮る。それだけです。
カメラを持っている、光に反応して撮る、それだけです。
スランプの時期を脱したのか、それは分かりません。
まだその中にいるような気持ちになる時もあります。
でも、この世に光があれば、もしかしたらまた何か撮ることができるかな、と
思えるようになりました。
私の写真を撮るという行動は、コンセプトはありません。
ただ、美しいと感じる景色や花、緑、そして光や水身体で感じて目に映してやりたい、
そして記録したい、願わくばフィルムに定着させたいという本能的な欲望に基づいた行動です。
私の光の記録です。
石川 文子