「 タ ワ ー 」 小倉正志(平面)
2011年8月27日(水)~9月18日(日) [ 会期終了 ]
作品ステートメント / 展示概要
都市を描くということは、現代を描くということだと思っている。
この15年間、都市をテーマに制作を続けてきた。その中で、飽きるどころか都市に対する魅力は高まっている。
都市は感情を持つ生命体として、我々の時空に存在する。20世紀以後、天に向かって発展してきた都市は、人間の欲望の象徴として、高層ビルを地上に構築し、21世紀には、上海、ドバイという新興の経済エリアにも、他を圧倒する塔が天に向かって聳え立つ。
そんな都市の繁栄を打ち砕く出来事がニューヨークのマンハッタンで起きた。
2001年9月11日に世界貿易センタービルに2機の航空機が激突した同時多発テロである。この日を境に、世界の価値観は変わり、その後の世界は混沌と模索の中にいる。
生命体としての都市は増殖し、拡張と変貌を繰り返す。人間の身体性をはるかに超越した都市の生命力は都市空間の中で複雑に絡み合い、デジタルネットワークを“ 神経”とするなら、電力は動脈であり“ 血流”といえるだろう。
これとは対照的な光景として、自然の光やイルミネーションを背景とした都市の姿には、優しさや、希望を感じさせ、人間の心を揺さぶる。
こうした相反する姿が都市の魅力であり、都市に生きる者にしか体験できない特権といえるのではないか。
私が都市を描き続けてきた今、9.11のニューヨークの同時多発テロ以後、都市の持つ普遍的な2つの貌(かお)をテーマに制作することを考えた。パワーとエネルギーに満ちた都市の貌、もう一つは、優しさと癒しをテーマにした都市の貌である。
前回2009年のニュートロン東京での展示では、10年以上の制作期間の中からセレクトした作品が中心であったが、今回の展示では、2009~ 2011年8月までの期間の作品を中心に構成されている。
今回の展示は、15年間の節目の発表でもあり、また新しい展開の始まりでもある。20世紀以前の作家が見ることすら出来なかった増殖する都市の繁栄を描くことは、今世紀に生きる作家に与えられたテーマといえるのではないだろうか。
小倉 正志